半田漆器

半田漆器最後の塗師・竹内久雄氏が亡くなりました。
現在、後継者はおらず、江戸時代から受け継がれた伝統の技術が途絶えることになります。

徳島県の北西に位置する町、つるぎ町。
2005年に半田町、貞光町、一宇村と合併してつるぎ町となりました。半田そうめんが有名です。

ここに伝統工芸として「半田漆器」があります。
半田漆器は、江戸時代の享保年間(1716~1736年)から約280年の歴史をもつとされています。
最盛期は明治時代中期です。
半田の人口の約1割にあたる800人余りが漆器関連の職人として働き、九州や東京にも販路がありました。

その漆器作りが栄えたのも昭和初期まででした。
陶器やプラスチック製品が出回り始め、高度経済成長期には、全国の漆器産地と同様に、プラスチック製品に市場を奪われました。

1947年に塗師として家業を継いだ竹内氏でしたが、東京オリンピックが開かれた1964年に一度廃業し、旧半田町役場に就職しました。漆器作りから遠ざかりながらも、町誌の編集で半田漆器の研究に情熱を注いでいました。

1989年に塗師に復帰、漆を一度塗っただけの荒物といわれる大衆漆器が主流だった半田漆器に、新たな息吹を吹き込もうと、漆を7、8回も塗り重ねる高級品作りを始めました。

伝統の灯を絶やさぬよう、後進の育成にも力を注ぎましたがうまく行きませんでした。

漆器に興味を持ち、竹内氏の工房を訪ねたことがある町内の有志が、竹内氏の技術を記録した映像の整理や残された作品の展示会を検討しているそうです。
半田漆器の歴史を伝える資料として後世に残し、いつか新たな塗師が現れたときに役立ててもらえればとのことです。

後継者が出来なかったことはさぞかし残念だったと思います。
謹んでお悔やみ申し上げます。

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